この年は、工場のある製品の生産管理システムの構築プロジェクトをはじめた。生産管理というと、製造、試験、出荷という3つのジャンルにまたがるシステムである。基幹システムからオーダーをもらって、そのオーダーに従ってユーザ規格にあった製品を出荷していくというごくオーソドックスな生産管理システムである。
世はちょうどメインフレームのホストー端末からクライアントサーバーへ移行しつつあったので、われわれもその方式を採用することにした。しかし、問題があって、そのとき工場システムとしてAS400を使った設備保全などの部門システムが稼動していて、当初UNIXを使おうとしたが、まだ信頼できないと言われて、そのAS400を使えとなったのである。AS400をサーバにしたクライアントサーバーは世界でも珍しかった。CSBuilderというミドルウエアをかましてやったのである。
そして、開発方法をどうするかが非常に頭の痛い話であった。クライアントサーバーという新しい仕組みを使うなら、従来の方法ではなくその新しいプラットフォームに合った形のメソッドが必要だと考えたのだ。
ただ、CASEなるものもあったのだが、どうもしっくりいかない。RDBMSにORACLEを使うにしても肝心のDB設計をどうするのか。言語はCOBOLじゃなく4GL(第4世代言語)なら何を使ったらよいのか、バッチはどうするのかなどである。
まず、DB設計のことである。そのとき出合ったのが「T字計ER手法」である。これはSDIの佐藤正美さんが考案したDOAの手法で、ER図におけるエンティティの表現をT字型に記述することからそう名づけられた。
佐藤さんは元アシストだったので、当時のアシストの営業に教えてもらって、自分で佐藤さんのセミナーに行き、直接話も聞きながらこれでいこうと決めたのである。ぼくは、自分で開発も設計もしたことがなかったが、佐藤さんの話は強烈だった。分からないなりにいいものだと感じたのである。
そこでどういう風にコンサルを受けるかであった。お金もなかったので、「赤ペン先生」方式にすることにした。要するに、こちらでER図を書いてそれを添削してもらうという方式である。もちろんそのための講習を受けてだが、最初にビックリしたのは、こちらのプロジェクトの概要や仕様について説明しようとなって、名古屋で会ったときのことだ。
一生懸命計画書の説明をしていたら、途中でもういいからすぐにER図を書いてもって来いと言う。それを見れば、そんな説明を聞かなくても何を作ろうとしているのかすぐにわかるときた。で書き出したわけであるが、そう簡単な話ではない。かなり苦労したが、なんと設計することができ、その図を壁に張って開発を行なったのである。よくER図を見ながらユーザと会話してというけど無理ですね。やはりむずかしい。
次に苦労したのは、コーディングに入ってからである。結局、業務フロー図作成にXupper、RDBMSにORACLE、データモデラーにERwin、4GLにSQLWindows(のちにCentura)という組合せにした。ですから、SQLWindowsでコーディングするのだが、開発していくうちに、こりゃ期限までに終わらないという声が出てきたのだ。
そこで、急遽専門家を呼んでレビューしてもらったら、こんなふうにゼロから作りこんでいたのでは時間がかかってしまってしょうがないという指摘である。そして、クラスの利用を薦められて、それを購入してしのいだ。それでもかなり工期が後ろに倒れていった。そのクラスで助けてもらったのが、クラステクノロジーの四倉社長で、今もECObjectでがんばっているので陰ながら応援している。
さて、そんなわけで、新しいプラットフォーム、開発方法論で始まったプロジェクトはかなりの苦戦を強いられながら、進んでいったのである。
