前回、いまの業務システムがビジネスの変化に追随できていないということを指摘した。そこでもう少し具体的に問題点を探ってみましょう。大きくつぎのような分類をしてみました。
まずは、構造的な問題について考えてみます。いろいろな領域でその構造の問題点が浮かび上がってきます。
システムそのものの構造については、前にも触れたように変化対応力に乏しい硬直的な構造になっています。それは、手組み開発であれ、パッケージ開発であれ、プログラムに機能が埋め込まれた構造になっていて、手組みだとそこにプログラムを継ぎ足し、スパゲッティ状態を作りだしています。
パッケージの場合はそうではなくモジュール単位になっているじゃないかと言われますが、結局、カスタマイズやアドオンという形でロックインされてしまいます。ですから、基本的にみな密結合で形成されているといえます。これが、柔軟性、すなわち変化対応力がない原因ではないでしょうか。
つぎに、ユーザとベンダーとの関係をみていきましょう。ユーザといっても直接現業部門ということもあり、IS部門が窓口という場合もあるでしょう。また、ベンダーといっても、SIerであったり、パッケージやソフトウエアベンダーであったり、単なる開発ソフトハウスだったりします。そのなかで一番悩ましい問題を抱えているのは、ユーザ企業のIS部門とSIerとの間の問題ではないでしょうか。
そして最大の問題は、「情報の非対称性によるインセンティブの歪み」から生じる利害の不一致です。どういうことかというと、ITに関する情報はたいていの場合SIerが多く持っています。ユーザはSIerがどんなことをしているの容易にはわからないし、自分たちの要求がどう実現されるかはできてみないとわからないという意味で情報不足の立場にあります。
この非対称性によってどうなるかは、コストや品質などについての合意形成の難しさとして表出してきます。しばしば、ここの争いでプロジェクトが紛糾することになります。
組織と個人の問題という点では、簡単に言うと、IS部門であれ、SIerであれ、自分のキャリアパスをどう描くが焦点になるでしょう。3K職場と揶揄されるように、ITSSのようなものがあったとしても、必ずしも実際の現場レベルにはきちんとした人材育成ロードマップやロールモデルがあるとは言えないのではないでしょうか。
ついで技術問題をみていきます。これは何回も言っていますが、簡単にいうとつぎの開発のジレンマのことになります。
こうしたジレンマを抱えながら技術者は日々苦闘しているのではないでしょうか。このジレンマから解いてあげることを真剣に考えないといけません。
最後の制度や慣習みたいなものもあるがここではそれほど重要ではないということで取り上げないことにします。

コメント (2)
時々拝見させて頂いています。
この分析面白いですね。色々なことを考えさせてくれます。
ちょっと思ったことを垂れ流しで書かせて頂きます。
■
構造上の問題、と、技術上の問題(仕様を決定付ける科学的、工学的なモデルが存在しない)、はニワトリタマゴというか、相互に影響しあっている問題であるかな。
■
構造上の問題には、「ユーザ内の構造の問題」もあるかな。
ビジネス要求 → システム仕様 、と落としていくプロセスの中で、
・ユーザ部門-IS部門
・経営(ハイレベルのビジネス要求ホルダ)-現場ユーザ部門
・ユーザ部門内での 声の大きい人 - 声の小さい人
の間に常にギャップが発生しているな。
■
これら構造的な問題は、科学的・工学的なモデルが存在することで解決に近づく部分もあるだろうな。
科学的・工学的なモデルとして、
・個々のビジネス要求間のトレードオフを明示し
・恣意性を排除した合意を行い
・ビジネス要求からシステム仕様までを誰もがわかる形で表現し
・明確なトレース可能なログとして残す
ことができれば構造的な問題の一部は解消するだろうな。
■
しかし、構造的な問題のうち、各ステークホルダーの利益に絡む部分は、
どんなに明確なモデルを表現できたとしても、本質的な問題として最後まで残り続けるだろうな。
■
システム改修というものは、新規構築時に比べ、
このように本質的に孕んだ問題が浮き彫りになることが多いな。
「この仕様に決定した背景が分からない」とか、「当時の担当者が既にいない」などで袋小路に入ったり。
というと、新規構築時には「ビジネス要求 → システム仕様」を一気に・勢いで落とし込むことで、本来してはいけないショートカットをしているのかもしれないな?
などとつらつら連想しました。
整理できてませんがこのままコメントさせていただきます。
また読みに来ます。
投稿者: taisei | 2009年03月01日 16:15
日時: 2009年03月01日 16:15
コメントありがとうございます。
非常に鋭いご指摘で、まさにそのあたりの議論を煮詰めたいと思っています。
構造的な問題の解決の糸口として「科学的・工学的なモデル」を提示できればよいと考えています。
そのモデルとしておっしゃるとおり
>・個々のビジネス要求間のトレードオフを明示し
>・恣意性を排除した合意を行い
>・ビジネス要求からシステム仕様までを誰もがわかる形で表現し
>・明確なトレース可能なログとして残す
ということだと思います。
そこで問題は、
>しかし、構造的な問題のうち、各ステークホルダーの利益に絡む部分は、
どんなに明確なモデルを表現できたとしても、本質的な問題として最後まで残り
続けるだろうな。
となります。ここの論点は、業務プロセスと業務ルールをどう切り離して、かつ動的・有機的に結びつけることができるかであるような気がしています。
投稿者: mark-wada | 2009年03月01日 17:34
日時: 2009年03月01日 17:34