連休中にもかかわらず用事があって東京に出かける。せっかくだからと思って、日比谷シャンテに。お目当ては、「スラムダンク$ミリオネア」だったのだが、何と行列で次々回まで満席という始末。仕方ないので、「フロスト×ニクソン」を観る。仕方なしに見たとは言えないくらい面白かった。
題材は、もう有名だからご存知だと思うが、米国で任期中に辞任した唯一の大統領というニクソンに、その数年後にイギリスの著名な司会者のデビット・フロストが単独インタビューを敢行して、謝罪の言葉を引き出す話である。
ぼくらの年代だと、この状況をよく覚えているのでどんどん出て来るエピソードやそれこそジョークもすっと入って面白く思うのだが、よく考えてみるとあのウオーターゲートを知らないとつまらないかもしれない。というかついていけないかもしれない。若い人はあまり知らないので、「スラムダンク$ミリオネア」の方が観たいと思うのであろう。
もともと舞台でやっていたものを映画化したそうで、そういえば、舞台劇を観ているような感覚にもなる。二人の会話が速射砲のように飛び交う様は、言葉の格闘技である。
ちょっと飛躍するかもしれないが、少し前の朝日新聞に劇作家の平田オリザが書いていたが、政治家は自分の役回りを演じきれるかどうかが重要な資質であるというようなことを書いていたが、まさにこのことが映画で表現されている。
一見するとこの映画に登場するインタビューアーであるキャスターのほうが演技を必要とすると考えがちであるが、もっと政治家のほうが演技者としての存在感が大きいように思えてくる。
だから、何だかキャスターのほうが可愛いい本性が出てしまうようでおかしかった。そこの駆け引きがすごい面白く、ぼくは、ニクソンがフロストに負けたと思われているが、むしろ、勝ったのはニクソンではないかと思うのである。ひょっとしたらそれがこの映画の狙いではなかったのか。
映画でも語られているが、結局最後はテレビに映し出されたニクソンの苦渋の表情あるいは観念した目つきなどがその激しい会話以上に民衆にインパクトを与えたといっていたのが印象的で、このこと以来、テレビに映し出される政治家の姿をいい意味でも悪い意味でも大きな判断要素となったのである。
ニクソンを演じたフランク・ランジェラもフロスト役のマイケル・シーンも熱演で非常によかった。政治家とキャスターという対照的な二人のように思うのだが、実は共通点もあたり、あるいはコンプレックスを抱えていたりというふうに類型的でない描き方も好感をもてて、なかなか見ごたえのある映画であった。

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