いま、こうして業務プロセスパターンの研究をしていますが、なぜパターン化するのか、パターン化すると何がいいのかといったことを提示しなくてはいけないと思っていたところに、Yuzoさんという方から下記のようなコメントをいただきました。
非常に本質的で、示唆的なご意見だったので、本文で紹介しつつそれに答える形で標題の疑問について考えてみたいと思います。コメントほんとうにありがとうございました。
私もビジネスプロセスを研究しております。
研究にいたった経緯は、企業の経営コンサルティングや事業再生に携わる中で、中長期で成果がでない企業や倒産してしまう企業を目の当たりにして、”なぜ短・中・長期で業績が改善しないのか”を自省も交えて悩んだ結果、ビジネスプロセスに行き着きました。
最近のある企業でCOOという役割を頂く機会があり、試しに商品設計・販促・契約・調達?サービス提供・アフターフォロー・クレーム対応までのビジネスプロセスをすべて1人で行ってみました。試しとは言っても、もちろん、仕入先やお客様も含めて本番です。
ここで、ビジネスプロセスの究極は、1人ですべてを行うことだということに気がついたのです。
逆に言えば、多くの企業は機能別組織で分業化され、階層化されて組織自体が肥大化していくうちに、セクショナリズムや職位やでき、現場(仕入先やお客様)から遠ざかっていることにより様々な問題が行っているということを体感しました。
早速、私は、お客様との面前での反応やお声を拾って、商品設計や仕入先にフィードバックしましたが、あっという間に売上が10倍になったり、提供までのリードタイムが3日→30分に飛躍的に短縮されたり、労働生産性が2倍以上になったりと効果が現れはじめました。
このビジネスプロセスを1人で行ったことの教訓として、
(1)プロセス(人の活動)は標準化すべきではなく、お客様に合わせて柔軟に対応できるように人の活動を見直す
(2)機能(営業部やマーケ部や購買部)でビジネスプロセスを細切れにするのではなく、お客様を基点に商品や地域といったプロセスで組織を再構築する
→こうすることで、営業・マーケ・購買が1つの部になり、その目標はお客様満足や売上として一本化されるため、今までのお客様ではなく各部の上司の顔色をうかがった活動が是正される
(3)経営層や中間管理職は、機能ごとではなく、プロセスごとに責任をもつ
→数字しかみない経営陣や中間管理職は、プロセスに責任をもつようになることで、自ずと現場検証や自分が旗を振ることになり、余剰人員や労働生産性を改善せざるをえなくなる
ほかにも気づきはありますが、このあたりで。
私自身は、上記の理由からビジネスプロセスをパターン化することに意味はないと考えております。
ビジネスプロセスはお客様の心変わりやシーンに合わせて柔軟にスピーディに良いものとして提供するものだと考えているからです。
パターン化してしまうと誰でもできるようになりますが、人は考えて行動する生き物ですから、パターン化せずに個性を活かす方向が自然ではないかと考えています。
では順番にみていきましょう。
「ビジネスプロセスの究極は、1人ですべてを行うことだということに気がついたのです。」
ということですが、ビジネスプロセスは人や組織に左右されるものではなく、あくまでその会社のビジネスにとって必要なプロセスはどうあるべきかを追求したものであるべきです。以前にも書いた作法でもスイムレーンは書かないほうがいいと言ったのはこのことです。
ですから、一人ですべてを行なうことというのは裏返して言うと、プロセスが人や組織を前提としないようになっているからこそ一人でできるとも言えます。しかも一人ですから一貫化されたものになります。
(1)プロセス(人の活動)は標準化すべきではなく、お客様に合わせて柔軟に対応できるように人の活動を見直す
ここでプロセス=人の活動というふうに書かれていますが、プロセスには2つの異なった性格のものがあると考えています。必ずしも、人の活動だけがプロセスではないように思います。
これが、私が主張している2段ワークフローで言っているところです。すなわち、人間の活動を主体にしたプロセスをミクロワークフローとして、その上位階層のプロセスは、システム主体で動かせるマクロワークフローというふうにして分けて考えています。そして、標準化あるいはパターン化すべきと言っているのはシステム主体で構成できるマクロワークフローのレベルのことを指しています。
ご指摘のお客様に合わせて柔軟に対応できるようにするための仕組みはミクロワークフローのレベルのことで、ここは“ゆるく”作りますが、それでもどんな種類の情報をもとに人は活動するのかというようなことはある程度パターン化してもいいように考えています。
(2)機能(営業部やマーケ部や購買部)でビジネスプロセスを細切れにするのではなく、お客様を基点に商品や地域といったプロセスで組織を再構築する
これもその前のご指摘と似ていると思いますが、組織から独立したプロセスにするということと、それが途切れることなく一貫したものであることは大事です。おっしゃるとおりプロセスありきから組織を見ることが必要になると思います。
(3)経営層や中間管理職は、機能ごとではなく、プロセスごとに責任をもつ
この場合、機能の定義がありますが、組織という感じに受け取れますが、そうだとおっしゃるとおり、プロセスごとに責任を持つことが必要です。ただし、この場合でも、誰がどのレベルのプロセスに責任を持つかがあります。トップやミドルマネージメントが現場レベルの細かいところまでは責任をもてませんから、切り分けが要るように思います。
すなわち、ミクロワークフローである現場での単位意思決定(私はこれを機能と呼んでいます)のようなレベルは、現場のリーダが責任を持つものだと思います。
その単位意思決定の連なりとなるマクロワークフローである業務プロセスに対しては、事業部長などのような事業の責任者がその責任を負うというのが必要となります。(中小企業の経営者は別としてプロセスの責任者は経営者ではなく事業部長のような立場の人だと思います)
こうしてみていくと、業務プロセスの階層化という考え方やビジネスの競争力の源泉がプロセスのどこにあるのかといった議論になるかもしれません。
私の主張しているパターン化というのは、マクロワークフローレベルのプロセスパターンとミクロワークフローレベルの意思決定“支援機能”のパターンのことを言っています。ですから、パターン化すべきプロセスとそうでないところがあるということを言いたいのです。
繰り返しますが、お客様との接点のようにケースバイケースで不安定で非定型なプロセスまでパターン化しろということではなく、そこはむしろ“情報共有の場”を提供することで人の知恵や個性が生きるようにすることを提案しています。
最後に、なぜパターン化する(マクロワークフローレベルです)かですが、それがビジネスの競争力の源泉がプロセスにあるのかという提起につながります。言い換えれば、プロセスに差別化要因がなければパターン化してもかまわないとも言えます。
私は、このマクロワークフローレベルのプロセスにはそれがないように思うのです。ですから、工学的な扱いができると思っていて、工学的ということはモデル化できるということで、そのためにはパターン化するということです。
そうすれば、その部分では属人的にならず、人や組織が変わっても、同じようなプロセスを維持できるのでそのたびに変更するようなことをしないですむからです。
このことは、SCOR(Supply Chain Operation Reference model)のような標準化されたリファレンスモデルを見るとわかるかもしれません。
SCORでは、計画プロセス(PLAN)と4つの実行プロセス(SOURCE、MAKE、DELIVER、RETURN)を徐々に分解していきます。ところが、細かく分解していくとだんだ人間系になったり、分岐が増えたり、固有性が出てきます。ですから、SCR自体ではレベル3までが共通フレームワークとなっているわけです。
言い換えると、上位プロセスでは標準化ができているのです。ですから、どこのレベルまで標準化でき、どこのレベル以下は標準化できない(標準化しないほうがいい)かを吟味していく必要があります。私はSCORで言えば、レベル4までを標準化したらと言っています。
では、どこに差別化要因があるのでしょうか。もちろん最大のものは商品やサービスにあるのですが、業務プロセスのところで言えば、私はプロセスそのものではなくて、そのプロセスをオペレーションするところの優劣ではないかと思っています。
迅速で効率的な質の高い、そして顧客満足度を高められるオペレーションができるかどうかで差がつくように思うのです。そこでは、的確な業務ルールや判断基準、優れたリソース、有益な参考情報取得、さらに不断の改善努力などが相まって他社と違うビジネスオペレーションを実現し、それがビジネスに貢献していくのではないでしょうか。