この経済危機もさることながら、も少し巨視的な目でみると歴史的に大きな変化の中にあるような気がしている。いろいろな価値観がいい意味でも悪い意味でも転換していくように思う。
そんな思いもあって、網野善彦の「日本の歴史をよみなおす(全)」(ちくま学芸文庫)を手にする。網野史学の面白いのは、“常識を破る”ことにある。ぼくらも含めて学校などで教えられた歴史が実は違う実相を持っていたというようなことが語られるのである。
それはもう目からうろこで驚かされる、その最たる例が、日本が農業中心の社会であったというが、実はそうではなくて、「海民」といわれる海や川を行き来する民の存在や商工業者やその他の人々から成り立った社会であったという主張であろう。
そして、さらに縄文、弥生文化の時代がいま分かっている以上に多様でダイナミックであったこと、大陸との交流が西だけではなく北からもあったこととか、古来男性社会であったと言われているが、実は女性がかなり力があったというようなことなどなど面白い話が一杯つまっていて読んでいて飽きない。
網野善彦がすごいと思うのは、最初に言ったように常識を疑う態度とそれを仮説で終わらすこと無く実証的に研究することにあると思う。それにより、常識であった農本主義を覆すものを見つけ証明していっているのである。それはいつも民衆の生きたときに自分も身をおきながら見つめていることが原動力になっているように思う。
本の中身については言いたいことは一杯あるのだが、ここからは話がそれてしまうが、この研究態度について書く。さきほど言ったように常識を疑うということは非常に重要なことで、それは何も歴史学に限った事ではなく、どんなことにも当てはまる。
逆に常識を信じるということは言い換えれば権威に従属するとでも言ったらいいと思うのだが、しょせんそういうもので、それを変えることなんかできないというあきらめを持つということに他ならない。
この本では、歴史の多様性とダイナミズムと民衆のしたたかさを見ることができるが、同時に著者の常識を疑って見る目とそれを評価するフィールドワークの大切さを学ぶことができる。
最後に、冒頭に書いた転換期のことですごいことを言っているので載せておく。
現代はまさしくその大転換期にさしかかっていると私は思うのです。現代は権力の性質というより、むしろ権威のあり方を否応なしに変化させるような転換期はいりこんでいるように思うのです。 たとえば室町期、十四、五世紀にできた村や町のあり方が、今や崩壊といっていいほど大きな変化にさしかかりつつあることは疑いないことだと思いますし、人の意識の上にも大きな変化がおこりつつあります。病気のとらえ方、動物に対する接し方の変化などに見られるように、人間と自然とのかかわり方がいまや人類的な規模で変化しつつあることのあらわれが、日本の社会にもはっきりおこっています。いちばんはじめにいいましたように、日本の社会はいま、十四世紀の転換以来の大転換期の時期にさしかかっていると考えられのです。
さて、この大転換期をどう乗り越えていきましょうか。
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