« YAPC::Asia2009登壇記 | メイン | 柳家小三治一門会 »

イノベーションの新時代

先日のBPM協会コンポーネント部会で紹介された「イノベーションの新時代」(C・K・プラハード著 日本経済新聞出版社)を読む。著者のプラハードは「コア・コンピタンス経営」や「ネクスト・マーケット」を書いた有名なビジネス思想家である。

最初は、どうせ経営の本かなあくらいに思っていたら、何のことはない業務プロセスやICT(最近は単にITということではなくCommunicationも入れたICTという言葉を使うようになってきていいことだ))のことが半分以上も占めていた。すなわち、イノベーション実現には業務プロセスが大いに関わっているということである。

よくイノベーションはカリスマ経営者の比類のないアイディアで引き起こされるとか、驚くようなブレークスルーで達成されると思いがちだが、それよりももっと現実的なそして継続的なイノベーションが必要になってくるという。

そのための重要なコンセプトとしてあげているのが、「個客経験の共創」と「グローバル資源の利用」というふたつである。この考えがずっと出てくる。

簡単にいえば、個別の顧客ごとに一緒になって経験を共に作り出すことが重要で、そのためには資源をグローバルに求めることが有効であるとしている。たしかに、今日の顧客とのあり方やいろいろな意味でのグローバル化を見ているとそんな感じがする。

この本で、かなり大きなスペースで業務プロセスのことが取り上げられていることにちょっと驚かされる。もうひとつ分析力もあげているので、業務オペレーションとその結果の分析の大切さを強調している。このあたりがよくある経営書とちょっと違うところであろう。

そう思っていたら、この著者のプラハードは、IT企業の創業者であって、その会社はBPMベンダーのTIBCOに買収されたのだという。どうりで業務プロセス、そしてITCの重要さを強調しているかが分かった。

しかしながら、注意しなくてはいけないことがあって、ここでいう「業務プロセス」の意味は、BPMの世界で言っている業務プロセスとは違うのである。ここではかなり広い範囲を言っている。

戦略までは入っていないが、ビジネスモデルやサービス機能そして業務ルールとかデータ分析のようなところまでを包含して言っている。その中で、業務プロセスが競争力の源泉であると主張しているわけである。そこまで広く捉えていれば当たり前にそうなのだが、誤解を生む可能性がある。

普通はワークフロー的な業務の流れを想定するから、そこに競争力の源泉があるのかと思ってしまう。このブログでも再三言っているが狭義の業務プロセスには差別化要因はあまりないと思う。むしろ、この本でも言っているように、ビジネスの変化に応じて素早く業務プロセスを変更できることが競争力を生むのだろう。

先に述べたとおり、これだけ業務プロセスに言及している経営本は少ないので業務プロセスに携わっている人にとっては面白いのではないでしょうか。しかも、それを実証的な研究としての多くの事例をもとに語っているので説得力がある。

ただ、かなり広く業務プロセスを定義しているから、もう少し分解していかないと、どこに目新しさがあるのかわからない。読み終って最初に思ったのはなんだ当たり前のことをいているじゃないかということであった。

おそらく、BPM協会の部会で輪読するようなことになるとも思うが、かなり当たり前のことを言っているだけのところもあるので、ただ書いてあることを理解しても仕方ないような気がする。ここからより具体的なアプローチをどうするのかを検討することが必要になるのではないだろうか。
 

イノベーションの新時代
posted with yusukebe.com::AmazonSearch on 2009.9.9
  • M S クリシュナン C K プラハラード
  • 単行本 / 日本経済新聞出版社
  • Amazon 売り上げランキング: 12267
  • Amazon おすすめ度の平均: 1.5
    • 2 事例がイマイチ
    • 1 肩すかし
    • 1 主張に新規性なし
Amazon.co.jpで詳細を見る

 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://kamawada.com/~masanori/blog/mt/mt-tb.cgi/1138

コメント (1)

松井保憲:

和田さん。本ブログを拝見しました。小生もこの本を読みました。この中で和田さんが言われているように、非常に当たり前ですが、読み方、感じ方によっては非常に示唆していることが多いように感じました。
(1)今、日本の企業の業務システムは、どうすれば戦略的な事業機会に日々の業務を反映させることができるか
(2)ここで一貫して主張している個客経験の共創は一般にB2Cの場合にはこれからのサービスの根幹を提供するし、提供側もそれをどう具現化するか考えなければならないことです。しかし、個客を企業における社員と考えた場合、まさにこの考え方はほとんど進んでいないように思えますし、これをどう実現するかは大きな課題と思うのです。
(3)日本企業がコストを抑えながら臨機応変さを身につけるイノベーションを実現するには、どのような技術支援体制が必要か
などこの本の事例をもっと現実の日本の企業(大企業など規模に関係なく)深堀することが、ある意味でBPMをもう少し現実の業務プロセス、オペレーションの実現する考え方、尺度を提供できるようになると思うのですが、いかがですか?

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2009年09月12日 09:54に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「YAPC::Asia2009登壇記」です。

次の投稿は「柳家小三治一門会」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type