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ゼロの焦点

松本清張生誕100年記念と銘打たれた映画「ゼロの焦点」を観る。最初、清張のこの有名な作品が映画化されたと聞いてまず思ったことは、推理小説でもうバレバレの内容のものを映画にしても、先が読めてしまうからどうなってしまうのだろうかということである。

ですから、犯人はだれみだみたいなサスペンスを期待するわけにはいかない。ただし、清張の作品というのは、その時代に抱える世相やそこに生きた人々の生活を背景に犯罪を描いているので、そちらのほうに軸足を置いて描くと面白いかもしれないと思った。

はたして、監督の犬童一心は、3人の女の生きざまについて描くことによって、あの戦後まもない昭和をあぶりだしている。戦後の混乱から徐々に落ち着いていく、そんな時代を北陸を舞台に展開させた。

ここでストーリーを言ってもしょうがないので、何と言っても3人の女を演じた女優さんに登場してもらうのがいいだろう。行方が分からなくなった夫憲一(西島秀俊がいい味をだしている)を探す禎子役の広末涼子、金沢の煉瓦会社社長夫人の佐知子役の中谷美紀、憲一が密かに付き合っていた久子役の木村多江の三人である。

この中では、広末はちょっとという感じだが、中谷美紀と木村多江の二人がすごい。二人は日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞しているから本物だ。それだけでも広末はまだまだ追いつけない。

中谷美紀はこりゃ怪演ですね。もう鬼気せまる演技でさすが「嫌われ松子」だと思わせる。一方の木村多江はいま薄幸の女性をやらせたら右に出るものがいないと思う。この二人が、米軍のMPから逃げた小学校の校舎の中で歌を唄うシーンは出色である。

ところで、この作品を観に来ていた人はほとんどが年配の人たちであった。最初に言ったようにサスペンスにはならないから、清張の「社会派推理小説」の推理が抜けて社会派の部分が強調されているわけで、そうなると戦後のあの時代のことを知らない若い人たちが観ておもしろいのかということなのだろう。

例えば、バレバレだから言ってもいいと思うが、重要なキーワードは「パンパン」なんだけど、今の人は知っているだろうか。よしんば、知っていたとしても、キャバクラ嬢とどこが違うのかと言われかねない。そんなとらえ方をされたら映画が成り立たないのである。映画の内容とはあまり関係なく、そんなことを思ってしまった。

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2009年12月10日 11:14に投稿されたエントリーのページです。

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