これは、生田斗真の映画である。何しろ、本の累計売り上げが夏目漱石の「こころ」と最高記録を争っているらしいから、いまでも非常に多くの人に読まれているわけで、そうなるとストーリー性とか言うことではなく、誰がどう演じるかになるからである。
「人間失格」は監督が荒戸源次郎、その主演に生田斗真が起用された。この俳優さんはぜんぜん知らなかったが、テレビの「情熱大陸」でこの映画の撮影を中心に放送されたので、実際の映画を観てみたかったのだ。
ポイントは、あの堕ちていく中でニヒルに笑う表情なのだが、その点では生田斗真はよく演じていたと思う。雪の日に喀血して仰向けになってにやっとするシーンや病院のホールで立ちながら薄笑いを浮かべるシーンなどはなかなかのものだ。
それと何と言っても彼を取り巻く女優陣だろう。こういうある意味ふしだらな男はなぜか女にもてるのだ。これは太宰治の自伝的な色合いが濃いので、太宰自身も女にもてた。さて、その女優陣は、寺島しのぶ、石原さとみ、小池栄子、坂井真紀、室井滋、大楠道代、三田佳子という豪華というかバラエティに富んだ面々である。
主人公と入水自殺を図るが自分だけ死んでしまう未亡人を演じる寺島しのぶは、ベルリン国際映画賞の最優秀女優賞を受賞しただけのことがある演技で彩りを添える。中でも出色は三田佳子であのお歳で色気むんむん発揮して、息子よりも若い主人公を抱いて寝るなんて、まるで実生活を彷彿とさせてくれる。
なぜこう深刻な小説がいまだに人気を保っているのだろうか。あの戦争前後の時代という背景では生きることへの懐疑に悶えることもあるかもしれないのだが、現代でもそうした気分があるのだろうか。
映画館では、結構若いひとも多く、学校帰りの女子高生もいた。生田人気や太宰の生誕100年ということもあるかもしれないが、小説そのものあるいは太宰治の生き方みたいなところに共感するのだろうか。ここのところ太宰治の作品が「斜陽」「パンドラの匣(はこ)」「ヴィヨンの妻」と立て続けに映画化されているので、いくぶんはそうなのかもしれない。
ただ、ぼくとしては今の時代にあんな男があんな生活をしたら誰も見向きもしてくれないと思うのだけど。
