前々から、読みたいと思っていた本をやっと手にする。伊丹十三が1965年に書いた「ヨーロッパ退屈日記」(新潮文庫)である。伊丹十三はご存知のように、映画監督伊丹万作の息子で、自身も俳優から映画監督になって、「お葬式」「タンポポ」「マルサの女」などの話題作を撮った。
非常にマルチな才能のある人で、元々は商業デザイナーでその時知り合った山口瞳との縁でこの本が誕生している。絵や音楽、さらに料理の腕前も長けていてその感性は本物である。ちなみに大江健三郎は義理の弟である。1997年不倫疑惑で突然事務所のあるマンションから飛び降り自殺をした。一説では殺されたのではないかとも言われている。
そんな伊丹十三が、1960年から62年まで渡欧して、映画「北京の55日」とか「ロード・ジム」に出演したころのことを中心にしたエッセーである。これがとても面白い。今から45年前に書かれたものとは思えない文章なのである。この時代に読んでも全く違和感がないのである。
それは、単に皮相的な現象を描写しているわけではなく、本質的なあるいは文化論的な描き方をしているからであろう。普遍性のある捉え方をしているのである。その普遍性をもたらしているのは、人間を見る力、すなわち深い洞察力のたまものである。鋭い感性から眺める景色をこれまた鋭い言葉と文体で活写している。ある意味映画監督の眼なのだ。
いちいち載せるわけにはいかないが、一緒に映画の仕事した監督や俳優のこと、酒や料理のこと、音楽のこと、景色のこと、言葉のこと、盛りだくさんのエピソードから言及する辛辣かつユーモアのある話は思わず口元がゆるんでしまうのである。
実は、この本に書かれているのは、タイトルのようなヨーロッパ滞在の時の話だけではなく、日本での生活のことも書かれている。学校生活や友達のことなどを読むと著者の少年時代のことも知ることができ、その青春物語も捨てがたい味がある。
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- 文庫 / 新潮社
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粋
戦後日本のダンディズムとは
かっこよすぎ
辛辣を愉しむ
伊丹さんは偉大だったんだなぁ!

