かねがね読売新聞の「編集手帳」には感心させられている。その引用句、引用文章の豊富さと的確さにである。その「編集手帳」の著者である竹内政明さんが書いた「名文どろぼう」(文春新書)を読む。
ただ、このタイトルがいただけない。名文となっているのでてっきり美しい文章の例が出てくるのかと思ったら、名文ではなく名文句といった方がいい。落語のセリフや川柳あるいはだじゃれ、ジョークなどが並んでいて、どうみても名文というより気のきいた、おもしろい言葉と言った趣である。
だからといって、内容をけなしているわけではなく、よくぞこれまで探ししてきたものだと感心する。さまざまのジャンルの文献からおもわず噴き出すもの、じわっと沁みるもの、教えられるものなどが収められている。
ここはひとつ、笑ってしまったものを例示するのが一番の書評だろう。
明治から大正にかけて東京帝国大学で経済学を講じた和田垣謙三が、学生に「どうすればお金儲けができますか」と質問されたときの答え。 猿の毛を抜け! MONKEYの「K」をぬけばMONEYになるという洒落である。ナイジェリアのゴウォン将軍が国賓として英国を訪問したときのこと、エリザベス女王が馬車で出迎えた。二人が馬車に乗っていると。一頭の馬が尻尾を上げておならをした。女王はゴウォン将軍のほうを向いて言った。
「まあ、申しわけありません。いらして早々こんな失礼を」
「いや、どうぞ、お気になさらないでください」ゴウォン将軍は言った。「わたしはてっきり馬がしたのだと思っていましたから」次いで易者の話。
易者の前で子供が騒いだり、邪魔したりするので、易者が怒って「お前たちはどこの子だ」と言うと、子供が「当ててみな」さて最後に、いま話題の野球賭博について。関西の落語家に月亭可朝というのがいる。かれが、野球賭博の容疑で警察のやっかいになったことがある。
可朝は取調官に「お上のやっている競馬や競輪がよくて、野球賭博はどうしていけないのか」と聞いた。取調官は「野球賭博は暴力団の資金源になるからいけないのだ」と答えた。ここで、可朝は伝説に残る名言を吐いた。
「そら、負けて賭金を取られた場合でっしゃろ。わしは勝っとるから暴力団から吸い上げとる。表彰してほしいくらいや」
琴光喜も大嶽親方もそのくらいのことを言ったらよかったのに。チャンチャン
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竹内氏の「引き出し」の一端が垣間見えて興味深い
おやじギャグの宝庫
文章技術の本ではなく、日本語を楽しむための本
失望させられた最低の本
名文、名文章ではない。

