本を読んで驚かされるパターンに常識をくつがえされることと自分とは関係ない世界のことかと思っていたら実は根っこは自分たちの世界のことと同じことを言っていたというのがある。大げさに言うと以前にも書いたが、目からうろこと共感の嵐である。
この「傷はぜったい消毒するな」(夏井睦著 光文社新書)はそこまでがいかないにしてもそれに近い驚きがあった。傷はだれでもバイ菌が入って化膿しないように消毒しなくてはいけないというのを疑ったことがないのではないでしょうか。
ところが、この夏井先生は消毒してはいけないと説く。読み進むうちにその理由が明らかになってくるのだが、まさに驚きである。この先生の傷の治療法は「湿潤治療」というもので、治療の原則は次の2つである。
ですから従来のように「消毒して乾燥させる(=ガーゼで覆う)」と正反対なのである。これは奇をてらって言っているわけではなく、ちゃんと科学的にも納得いくものなのである。要するに、皮膚の細胞は乾燥に弱いから乾燥させると再生できなくなるのである。こんなことはどうしてわからなかったのかと思ってしまうが、昔からそうしていたからということでだれも疑問に思わなかったのである。
傷からでるあのジュクジュク(滲出液という)が自前で傷を治すメカニズムだったのだ。だから、これで傷を覆ってしまえばいいのに乾燥させてしまっていたわけである。ガーゼじゃダメで、サランラップでよかったのだ。びっくりするでしょう。
さてもう一方の話だが、今のようなことは医学界という世界でいわゆる権威だとか、旧い学説だとかが見直されることなく続いていることを意味している。これは言い換えれば既得権者がそれを守ろうとして、異説に対して強い抵抗を示すことなのである。
そして、そういうところは得てして科学的でないという側面がある。この傷の治療でもまさかこんな非科学的な治療が、いや非科学的だからこそ長い間まかり通っていたのかもしれない。これを筆者はパラダイムと称していた。そのパラダイムを非連続的に変えるのをパラダイムシフトという。そういうことが起きていると言っているが、実はまだ少数派なのだ。
ここまで言うとおわかりだと思いますが、ITの世界もしかりと思うのです。特にぼくが強調している業務システムのパラダイムは、非科学的であることもあってかなかなか大きな変化に至っていない。きちんと、理論的に実験的に証明しながらパラダイムシフトをもたらすことをしていかなくてはいけないとつくづく思うのである。
これはお薦めの一冊ですね。
- 夏井睦
- 新書 / 光文社
- Amazon 売り上げランキング: 851
- Amazon おすすめ度の平均:

完璧な滅菌は無理。ならば賢い共生を。
自分で直ったナイフの深い傷
ほぼ実践?
読んだ方が良いですよ
進化と系統分類の意味がわかります。

