ITproに連載された記事でいつも感心し参考になるものに「ダメな“ユーザー企業”を叱る!」というのがある。前シリーズ「ダメな“システム屋”にだまされるな!」も好評ですぐに書籍になった。著者は佐藤治夫さんで、元野村総研にいてその後スタッフサービスのCIOを務めた人である。
実は、ぼくはその佐藤さんを知っている、というか佐藤さんが野村総研時代に一緒に仕事をしたことがある、というか正確に言うと仕事をしそうになったことがある。あるプロジェクトの依頼先の一つだったが、残念ながら最後の最後でうまくいかった。その時の対面にいた佐藤さんとのおつきあいはおもしろいものであった。
話はそのことではなく、つい最近書いた記事についてである。その記事は、「日本の国民性は情報化に向かない?」と題したもので、その「“シロウト”が情報システムに口を出す」というくだりのところでちょっとひっかかるものがあった。そこにはこう書いてある。
例えば、自動車産業を見た時、クルマの機能、性能、デザインなどについて“シロウト”が何かを言っても、そのまま製品開発に反映されることはありません。安全性、快適性、工場での生産性など、シロウト考えでは及ばない観点があります。ですから、利用者も自動車メーカーも監督官庁も、みんな“プロ”の技術者に任せるべきだと考えています。 一方で、情報システム産業を見た時、情報システムの機能、性能、デザインなどについてシロウトに大きな発言力があります。安全性、信頼性、開発・保守の生産性など、シロウト考えでは及ばない観点・・・かと思いきや、“ユーザー企業”の中の権力者が「私は聞いてない」「自分は反対だ」「おれは責任を持たない」と叫べば、それまでの検討内容はどうにでも曲げられます。 日本では、プロであるはずのシステムエンジニア(SE)という名の技術者が、その資質を持たないことも多く、これが“ユーザー企業”の中の権力者が幅を利かす根本要因になっています。ここに書かれていることは比較的よく言われることでもあるのだが、何が気になったかというと、“クルマ”をつくることと“情報システム”をつくることは同じなのかということである。どうもこれは誤解ではないだろうかと思う。
つまり、情報システムはクルマではないのであって、クルマに相当するのは「ソフトウエア」や[ハードウエア]、何とか「パッケージ」までではないだろうか。情報システムとはそうしたソフトウエアやハードウエアを使ってつくるシステムなのであるからちょっと違った意味である。ソフトウエアを作るには”シロウト”はやはり口は出しません。
逆に、クルマの例で見ると、情報システムに似ているのが、クルマを使うバスとか、運送とか、宅配や引越システム、土木作業、タクシーなどのシステムのことに相当すると思う。手段とそれを使ったサービスシステムという区分けがあるように思うのである。
そう考えると違う景色が見えてくる。情報システムは企業では業務システムと言い換えてもいいので、その業務システムを構築するということは、クルマを作る人とそれを使ってサービスを作る人は明確に分かれているように、サービスを作る人が担うものです。
ところが現実には、SEと言われている人たちは、自分たちの仕事はクルマを作ることだと思っている。佐藤さんも勘ちがいしている。だからそこでサービスシステムを作りたい“ユーザー企業”の中の権力者との齟齬が生じるというわけである。何を作るのかがかけ離れているのだからこんなことになる。
とりわけSIerと呼ばれている業界の間違った常識が一向に改まらない限り日本のIT業界の不幸は続く。ソフトウエアとかツールを作ることとサービスシステムを作ることは全く違うことを早く気がついてほしいものだ。だって、トヨタやホンダは日本通運にもならないし、クロネコヤマトにもならないのだから。
- 佐藤 治夫
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身につまされる想いがあります
全てのシステム屋システム開発企業経営者は一読を!

