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電子書籍の衝撃

今回も佐々木俊尚さんが書いた「電子書籍の衝撃」(ディスカバー携書)を読む。電子書籍については、それほど興味があったわけではなく、そのうち広まったら手にしても遅くないと思っていた。ただ、ちょっと前にある人から電子ブックを見せられてちょっと感動したのと、iPADの登場でそろそろちゃんと見ておこうかという気になったのである。

改めて非常におもしろかった。とりわけ電子ブックプラットフォーム戦争という章で、アマゾン、アップル、グーグルの熾烈な争いは驚くとともに彼らのしたたかさを非難するより敬意を表したくなる。

アマゾンのキンドルの衝撃から始まったこの戦争は、先行するキンドルを追い打ちするようにアップルが果敢に挑み、逆転されるとアマゾンはアップルモデルをそのままコピーして巻き返しを図るといった図式である。そこに、豊富なコンテンツを保持したグーグルがどう割り込んでいくのかといった展開はまだまだ予断を許さない。残念ながら日本の会社の名前はない。

それと非常にわかりやすかったのは、電子化のインパクトについて音楽の例で示してくれていることで、iTune、iPODの例でその変化を追ってくれているのがよかった。そうなんです、電子ブックも同じ歩みをしていくはずである。

この本では、佐々木さんが電子ブックの円環という表現で提示していることが主題となっていて、その中のそれぞれの要件について検証を加えたものである。それは次のようなことである。

・キンドルやiPADのような電子ブックを購読するのにふさわしいタブレット。
・これらのタブレット上で本を購入し、読むためのプラットフォーム。
・電子ブックプラットフォームの確立が促すセルフバブリッシングと、本のフラット化。
・そして、コンテキストを介して、本と読者が織りなす新しいマッチングの世界。

ここでまだあまり注目されていないが、重要なのは後の2つで、簡単にいえばだれでも書き手になれる時代になったということである。有名作家だけが書き手になるわけではなく、ブラガーでもいい作品を書きさえすれば公にさらすことができるのだ。

おそらく早晩、いまの作家・出版者・取次店・書店といった世界は消滅していくだろう。しかしながら、著者も言っているように「電子ブックの出現は、出版文化の破壊ではない」ということをよく認識することです。いつの間にか読者を忘れた自分たちの既得権を守るためだけの出版文化から、本来の読みたい本を読みたいように読むための仕組みに変わっていくだけのことかもしれない。

その新たな形態として最後に書いてあるコンテキストを介しての読者と本のマッチングという姿だろう。これはもう一部の人もやっているし、ぼくもいくぶん実行しているのだけど、簡単にいうと、自分の好みにあった人が推奨する本を読むという行為である。いまはこれが売れ筋ですよ、これが話題ですよといって押しつけられて読むというプッシュ型から、自らの頭で選ぶプル型の読書スタイルである。

こうした潮流は抗しがたい事実であるから、こんな風潮はおかしいとか、今の文化を守らなければいけないと思うより、そのなかでどう振舞うかを考えた方がいいと思う。新聞の電子もしかりで新聞社がつぶれるとか出版社がなくなることへの感傷なんて捨てなくてはいけない。だいいち、記事がなくなるわけでもないし、小説がなくなるわけではないし、プラットフォームがどうなっても良い記事や良い小説は変わらないからである。
  

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2010年08月12日 09:51に投稿されたエントリーのページです。

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