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日本人へ リーダ篇

「日本人へ リーダ篇」(文春新書)は、ご存知塩野七生が文芸春秋に連載したものを新書化したものである。2003年6月号から2006年9月号まで巻頭随筆として毎月書いていた。以前は文芸春秋を定期購読していたので、この巻頭随筆で司馬遼太郎の「この国かたち」などを読んだ記憶がある。

さて、サブタイトルにリーダ篇とあるように、リーダたるものどうあるべきかについて、ローマの歴史を照らし合わせながら書いている。塩野七生は何といっても、毎年1巻ずつ執筆して、2006年に全15巻を完成させた「ローマ人の物語」が有名である。ぼくも2巻まで買って読んだが挫折した。

だから、塩野七生のバックボーンはローマなのだ。長いローマの歴史では、ユリウス・カエサルを筆頭に数々の優れたリーダが輩出されているので、彼らとの対比の中で現代の日本のリーダを評価するので非常におもしろい。といっても比較の対象としては小粒すぎるが。

著者はイタリアに住んでいるし、過去の歴史にも通じているので普通の日本人がみる眼とずいぶんと違っている。醒めた客観化ができるのですごく説得力がある。グローバル化した今日では、耳を傾ける価値が十分ある。ただし、ちと保守的なきらいはあるが。

実はお分かりのように、この連載は2003年から2006年までのものだから、4~7年も前のもので、だから小泉純一郎やブッシュがでてきたり、イラク派遣が話題になったりする、しかしながら、その書いてある内容が陳腐化していないのには驚かされる。

おもしろいのは、2000年も前のローマ帝国のことがそう古いことではなく、むしろ現代と相通じるところもあるのが新鮮だった。その中でも感心するのは、知力ではギリシャ民族に劣り、体力ではケルトやゲルマンに民族に劣り、技術力ではエルトリア民族に劣るローマ人がなぜあれほどの大を成したかである。

それは軍事力のみではなく、「もてる能力の徹底した活用」なのだという。言い換えれば、ひとつ一つでは他民族に劣るが、すべてを総合し駆使していく力が断然優れていたからだそうだ。それは自分たちの力だけではなくライバルたちのもつ能力さえも活用したという。

この「敗者同化」の精神こそローマの真髄なのだ。これを、その後の大英帝国を筆頭としたヨーロッパ諸国の植民地政策、あるいは現代のアメリカの戦後処理と比較したとき時代を越えて多くの示唆を与えてくれる。

そうした話が随所にでてきて改めて考えさせられる。最後に、この本の巻頭に載せたユリウス・カエサルの言葉を再掲する。

人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。 多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない。
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2010年08月16日 12:21に投稿されたエントリーのページです。

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