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キャタピラー

映画友だちS君と久しぶりにテアトル新宿に出かける。このクソ暑い日でも満席という盛況であった。若松孝二監督「キャタピラー」は、主演の寺島しのぶのベルリン映画祭主演女優賞受賞もあってか多くの観客がつめかけた。

これは衝撃的な作品である。戦争で四肢を奪われ、顔も焼けただれて帰還した兵士の妻がその夫とどう向き合いかが描かれている。最初のとまどいから、献身、そして嫌悪と様々な屈折した思いに心揺さぶられる。

この凄惨な姿の兵士はすぐに江戸川乱歩の「芋虫」を想像させられる。やはり、この小説からヒントを得ているのは間違いないと思われるが、まったく同じでもない。すなわち、この姿形が異様だから、衝撃的であるというわけでもないというところにこの映画の意味があるように思う。

最大のみどころはやはり寺島しのぶの演技だろう。賞をもらうのもうなずける熱演だ。上で書いたように、心の葛藤の変化を時には痛々しげに、時には腹立たしげに、時には本能的に、時にはたくましく表する。そのなかに、戦争のむごたらしさ、むなしさ、そしてこっけいさを潜ませていた。若松演出の冴えだ。

ただ、これはぼくの個人的なものかもしれないが、単に反戦映画であるというレッテルは適当ではないと思う。むしろ、人間のもつ本源的な心性、あるいは欲のようなものが強く描かれているように感じたのだ。ただひたすら食べることとやることしかできない男が、その存在の証である勲章と新聞記事を眺めることでかろうじて生きていくが、その救いがはずされたとき・・・。

だから、最後に広島や長崎の原爆投下の映像を流し、死者が何人だったというシーンはむしろ必要なかったのではないだろうか。それがなくとも、十分反戦というより戦争の一断面が多くを語っていたのだから、そこからの広がりを観客に持たせるだけでよかったと思う。

それにしても、S君も言っていたがこれは製作費がぜんぜんかかっていない映画だ。出演者だって名の通った俳優さんは寺島しのぶくらいだし、セットもほとんどないし、撮影日数も少なかったようだ。このあたりは、ピンク映画出身であるという面目躍如である。それでも優れた作品は作れるのだ。


観終わったあとは、時間が4時半と早かったのとS君の家の近くということもあり三軒茶屋の「味とめ」を久しぶりに訪れる。こんなに早いので空いているのかと思いきやすでに満席状態。というのもサンバ祭りをやっていたらしい。

それあるし、今年の2月に放送された「とんねるずのキタナシュラン」で紹介されたこともあり、それを見て来たという人が隣に続けて座る。だから、この暑いのに「いわしのすいとん風鍋」を食べていた。というわけで、映画と酒を楽しんで、また次回の映画観賞会を約して別れたのであります。
  

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2010年08月23日 11:27に投稿されたエントリーのページです。

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