塩野七生の「日本人へ リーダ篇」に続いての「日本人へ 国家と歴史篇」(文春新書)である。タイトルのように前著はリーダについてで、この本は国家と歴史についてであるが、そこは明確に分けられるものでもなく、同じようにローマ時代を中心とした歴史と照らし合わせて現代を見ている。
のっけに後継人事についてというのがでてきてこれがおもしろい。歴史上、最高の後継人事だと著者が言うのが、イエス・キリストから、ペテロへ、そしてユリウス・カエサルからアウグストゥスへのバトンタッチだという。
この二つの後継で共通するものは何でしょう。それは、性格から資質から何から何までちがう、二人の男の間で成されたバトンタッチだったということである。イエスもカエサルも一代を築いた革命家であるから、ある意味激しいが、それをついだペテロにしてもむしろ純朴だが頭が切れるわけでもなく欠点も多い、またアウグストゥスにしても戦はまるでだめだし決して無理をしない性格だった。
結局攻めていかなければならないときと守らねばならないときではそれにふさわしいリーダは違うのであって、大事なことはそれを見ぬいていた先駆のリーダがいたことである。これを見るにつけ、わが国の政界、財界の後継者選びの能の無さにがっかりする。
そして、またおもしろいのは、前回にはなぜローマが大を成したかということを書いたが、今回はなぜあれだけ長い間続いた帝国が滅びたのかである。それについて、「亡国の悲劇とは、人材が欠乏するから起こるのではなく、人材はいてもそれを使いこなすメカニズムが機能しなくなるから起こるのだ。」
ここでも、わが国のことに思いをはせる。そうなのだ、人材が欠乏しているわけではないのだ。問題は政治のメカニズムが機能不全に陥っていることが大問題で、これを放置すると亡国の憂き目にあうということなのだ。
本書は、ごく最近に書かれたものであるから、いま今の世相を斬っているので思わずそのとおりだとつぶやいてしまう。特に外交の話は歯切れがよくてさすが海外生活が長いと見る目も違うと思わせる。塩野七生を外務大臣に任命したらどうだろか。イタリア大使でもいい。
今回も、本の巻頭に載せられた言葉を記す。あの有名なニコロ・マキャヴェッリの言葉で、グローバル化した中での日本の立ち振る舞いのことを鋭く突いているようにもみえる。
自分で自分を守ろうとしない者を誰が助ける気になるか。
- 塩野 七生
- 新書 / 文藝春秋
- Amazon 売り上げランキング: 281
- Amazon おすすめ度の平均:

2006年から2010年4月までの「文藝春秋」の連載をまとめただけ
女には冷たい塩野七生という職業
日本を内と外から見た人の意見をそろそろ真剣に聞く土壌が日本にも必要
ローマ人の物語を書き終えた著者の心境と外から見た日本
傍目八目ってことですね

