以前、「「応援したくなる企業」の時代」(アスキー新書)という本を紹介したが、同じ博報堂ブランドデザインというコンサルタント集団が書いた本「あなたイズム」(アスキー新書)を読む。副題が、“ムリなく、自分らしく、でも会社に愛される働き方“となっている。
いまは、社会人の3人に1人が現在の仕事に対して「つまらない」と感じているという。仕事だからつまらなくてもがまんしてやるものだとか、仕事っておもしろくないんだよねといった意識は昔からあったけど少なくとも高度成長期にはこんなに多くはなかった。
そんな感じを持つ要因には二つあるという。ひとつはその人の「適性」や「志向性」が合っていないこと。もうひとつはその人の「スキル」や「才能」が合っていないことがあげられる。個人の「志向性」が合っていなければ、その仕事も職場もつまらないし、「スキル」や「才能」がフィットしなければ、結果が出ず、やはりつまらないからである。
そして、著者は「志向性」と「スキル」が合わさったものが個人の“持ち味”であるという。個人もそうだが、組織にも同じように“持ち味”がある。それを組織の「らしさ」と呼んでいる。この「個人の持ち味」と「組織らしさ」の接点を見つけることが大切だと言っている。個人と組織のらしさの接点にある価値観を行動指針とすれば、自分の持ち味を活かしながら組織の貢献できることになる。
この行動指針を「イズム」と定義している。昔と違って自分の持ち味を前に出せるようになったし、また組織も企業理念などでらしさをだすようになってきたと思うが、現実的な眼で見てしまうと、うまく接点をみつけられたらいいが、もし見つけられなかった時はどうしたらいいのかと考えてしまう。
入る時にイメージしていた会社がいざ入社したら違っていてどうしても合わないなんてケースはよくあるわけで、そうした場合日本の社会で労働市場が硬直化しているから、「イズム」を発揮できる別の会社への転職もままならないという事態が問題なのである。理想論としてはあり得るかもしれないが、実際問題、結婚と同じようにぴったりとはいかないと思うので、そうしたことをやり直す、あるいは修正できる機会を作ることも同時にしていかなくてはいけなのだろう。
本の終わりの方で3人の人と対談をしているのだが、これがおもしろい。明治大学教授の野田稔は元野村総研でコンサルをやっていた経験から、自分のまわりに辺境を作り続けたというのが印象的だ。「変わった人と組む」ことで偶然が起こりそうな状況を計画的に作ることだそうだ。
元早稲田大学ラグビー部の監督の中竹竜二は、ビジョンへの行動指針が自分のスタイルでそれを持てと指導したという話は説得力がある。彼の言うスタイルとは、どんな逆境でもこれだけは譲らないという軸を意味するという。そして、このスタイルが確立している選手をレギュラーにしたという。監督は、うまい、強い選手だけを選ぶわけでななく、個性的なスタイルの集合体としていちばん機能する選手を選ぶのだそうだ。これはよくわかる。
最後は、あの星野リゾートの星野佳路で、旅館やリゾート施設の再建をする場合、総支配人を送り込むそうだが、その総支配人の条件が、3つあって、まず明るくて前向きなこと、2つ目が、コミュニケーション上手なこと、そして3つ目が判断力なのだそうだ。最後の判断というのは正しい判断をすることではなく、材料が揃わなくてもとにかく判断するということだという。このあたりはおもしろいですね。アジリティが大事なのですね。
ということで本で言っていることはある意味当たり前な組織論なのですが、まだまだ日本の企業のなかで実践しているところは少ないように思う。それは、終身雇用や年功序列の弊害が残っているからなのかもしれない。
アスキー・メディアワークス
売り上げランキング: 257039

