SFC AO入試 志願理由

和田裕介 1999年秋


 私がSFCを志望した理由は、SFCの提唱する「新しい知」に興味があるからである。また、自ら「新しい知」の創造を共にしたいと思ったからだ。

 「新しい知」の創造として、具体的に私が実行していきたい事は、新しい総合芸術の創出とコラボレーションの実践・統合であり、その二つの融合である。

 総合芸術とは、音楽・美術・文学などこれまで個別に機能していた既存の芸術が、互いに融合し合って生まれる一つの新たな芸術である。もちろん、今までにも、そのような試みは様々な形で行われてきた。例えば映画は、一般的に、ストーリー重視、映像による表現に頼りすぎ、という偏りがあるものの立派な総合芸術である。また、オペラやバレエは古典的総合芸術と呼ぶ事ができるだろう。では、なぜ今私が新しい総合芸術を創り出そうと考えたか。その理由は、デジタルによる新しいメディア形成の手法が生まれた事。さらには、インターネットを中心としたそのネットワーク化が進んだ事にある。

 芸術は、いささかの異論があるものの、表現を目的に行われる行為である。それゆえ、その表現を形にするための、あるいは表現を認識するためのメディアがデジタル化する事は、芸術に大きな影響を与えるであろう。それは、ただパソコン上で絵を描いたり、作曲するなどの、既存の芸術分野における変革のみを意味するのではない。デジタル化がもたらす大きな利点は、様々な感覚的情報がデジタル信号により分解され、さらに統合されていくところにある。つまり、来たるべきデジタル・メディア時代では、総合芸術がより大きな意味を持つだろうと考えるのである。また、デジタル化がもたらすのは芸術の総合化だけではない。デジタル情報がネットワーク上を自由に行き来する事により、芸術のコラボレーションをも可能にするのだ。コラボレーションとはいうまでもなく「協働」である。

 私には総合芸術とコラボレーションの価値を、身を持って体験する機会があった。私の高校では、体育祭のメインイベントに「仮装」と呼ばれる演技がある。詳しい事は、別添資料を参考にしていただきたいが、仮装はまさにコラボレーションによる総合芸術である。音響による音楽的要素、衣装・大道具・小道具・隊形による美術的要素、踊りの舞踊的要素、さらにストーリーの文学性が融合して一つの仮装という総合芸術を生み出す。本番、みんなで一つの仮装を作り上げた時の感動は非常に大きなものであった。この感動はいったいどこから来るのだろうと考えた時、やはりそれは物理的共同作業の産物(物理的達成感)というべきである。すなわち、それは決して本当の意味でのコラボレーションとは言えない。しかし、もう一度冷静に自分たちの仮装のビデオを観れば、そこにわずかながら光るコラボレーションの産物を垣間見る事ができる。

 私は仮装パートとして、一から仮装制作に関わってきた。初期の会議において課題になるのは、テーマ・ストーリーの決定であるが、それこそコラボレーションが最も威力を発揮するアイデアの創出であった。次に、仮装の持つ総合芸術性が時としてコラボレーションを引き起こし、個の総和以上の価値を生み出す事もあった。例えば、私は音響の担当で、ある場面の曲を編集して持っていったとする。それを聴いて、踊りが得意な他のパート員が踊りのアイデアを出し合う。すると、踊りに関して乏しいイメージしか持っていなかった私であるが、音響の編集ができるという自分の得意分野のアイデアを提供する事により、踊りのアイデアも得る事ができる。これは踊りを提供した側にも利益があると言え、これこそをコラボレーションによる仮装ができていく姿と言える。このように総合芸術を創り出すにあたってのコラボレーションは、個人が個性を発揮する事によって全体の新たな価値を創出するのである。

 私はあの仮装での感動をもう一度味わいたいと思う。しかし、一度高校という環境を離れてしまうと、なかなか何十人、何百人という人が一同に集まるという事が無理になるという事に気付く。そこで私は、ネットワーク上での、総合芸術のコラボレーションを実現するべくSFCを志望したのである。それが実現すれば、よりたくさんの人達と、より芸術的な感動が得られると思ったからである。SFCの魅力的な環境は、技術的な面で私の今後の目標達成の手助けになるだろう。また、総合芸術の具体像や、コラボレーションが統合されてどこへ進んでいくのか、といった事にはまだ答えが出ていないので、それを環境情報学部で研究していきたい。それと、村井純教授の授業を生で受けてみたい。未だに、それは当然の事なのだが、直接会うというコミュニケーションに勝るコミュニケーションはないのだ。


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